2017年11月14日

『眩 くらら』 朝井 まかて著 新潮社 16/03

 くらら.png葛飾北斎の娘・お栄の一生を描いています。偉大な父の背中を追いかけるかのように、お栄自身もまた絵の世界にのめりこみ、親父どのの作品作りを手伝いながら腕を磨いていきます。この時代に独身で(離婚した)一生を筆一本を頼って生きていくのは並大抵のことではなかったと思います。それでもぶれることなく、親父どのを尊敬し、精進し続けた人生の集大成が「吉原格子先之図」ではないでしょうか。この本の表紙にもなっていますが、この作品は人の目をくぎ付けにする魅力があります。録画したテレビで何度も見るに飽き足らず、結局阿倍野ハルカス美術館の「北斎展」にも足を運び、絵ハガキを買ってきて(お目当てはクリアファイルだったのですが、クリアファイルは発色がよくなかった)、今も眺めながら書いています。「光と陰」「日本のレンブラント」と称されていますが、闇があるからこそ、光が映えるという言葉が実感できる作品です。そして、70歳を過ぎて「まだ満足に絵が描けやしねぇ、73を超えてようやく禽獣虫魚の骨格、草木の出生がわかった気がする。100まで生きたい、もっともっと修行して自由に自在に絵が描けるようになりたい」と本気で願っていた北斎の姿勢に大きな感銘を受けたのでした。
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2017年11月03日

『城をひとつ』 伊東 潤著 新潮社 17/03

 シロ.jpg北条氏に仕え、武力ではなく知略で敵陣を切り崩す大藤一族の活躍を描いた短編連作集です。
幻の兵法書『孟徳新書』の説く秘伝「入込」の術を身に着け、敵将の思考に入り込み、不安や猜疑心、逸る気持ちや功名心を巧みに操ることで、内部から切り崩していきます。自ら敵陣に入り込み、信頼を勝ち取り翻弄していくので命がけの危険な仕事の場合も多く、大藤氏の視点でハラハラしながら読むときもあれば、信頼を裏切られる敵将の立場で「目をかけてあげたのに」と恨めしく思うこともあり5篇とも大いに楽しみました。戦国時代の武将たちはみな背負うものが大きく、その決断には苦悩と犠牲が伴います。慈愛に満ち、潔く、勇ましく、スマートな男たち。本当にカッコいいの一言です。大藤一族の五代(といっても、この時代は本当に世代交代が速いので70年ぐらい)を扱っているので有名な戦国武将とのからみがたくさんあってそれも魅力の一つです。戦国小説として、大いに楽しみました。
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2017年10月29日

『残酷な王と悲しみの王妃2』 中野 京子著 集英社 15/10

残酷.jpg 2巻目をようやく読みました。ちょうど『ロマノフ王朝12の物語』と同時進行で読んだので、こんがらがってしまった部分もありますが、補強して読めた部分もありました。ルートヴィッヒ二世(ドイツ)は同性愛者でありそのことを苦悩し続けていたこと、そしてヴァーグナーの才能とオペラを愛し20年以上も惜しみなく援助し続けながらも、互いにいい関係を築けなかったことが胸にささります。デンマーク皇女マリア・フョードロヴナ(ロシア)は、ロシアのニコライ・アレックサンドロヴィチ皇太子と婚約していたのに、皇太子が挙式間近になって急死してしまい弟のアレクサンドル三世に嫁ぐことになります。そしてニコライ二世を含む6人の子供を産み、ロマノフ家が一家虐殺という悲しい結末を迎える中、唯一生き延びて祖国に帰ります。カルロス四世(スペイン)は、「無能」と父である三世に早々と烙印を押された皇帝です。妻マリア・ルイサとの関係は、ちょうどルイ16世とマリーアントワネットとの関係に似ていて、内気で趣味が手仕事と狩猟の夫と金遣いが荒く社交的な妻という組み合わせで妻に頭が上がりませんでした。マリア・ルイサは10人以上子どもを産み(2〜3人は愛人の子)、夫ではなく舅の仕事を23年間補佐し続けます(三世の后は早々と亡くなっていた)。凡庸で頼りにならないカルロス四世ですが、ゴヤが『カルロス四世家族像』(この本の表紙)を描いたことで永遠に名を名画界に残します。もちろん中央にいるのは、四世ではなく妻のマリア・ルイサです。あとカロリーネ・マティルデ(デンマーク)のお話も載っていますので興味のある人はぜひ読んでください。
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『ロマノフ家 『名画で読み解くロマノフ家12の物語』 中野 京子著 光文社新書 14/07

 ロマノフ.jpgロマノフ家の家系図と肖像画をみながら、ロシア300年の歴史をたどります。ロシアと言えば、イワン雷帝とエカテリーナ二世と、ピョートル大帝、ラストエンペラーのニコライ二世ぐらいしか知らなかったのですが、なんとリューリク朝から始まり、ロマノフ朝の1〜19代目までの血なまぐさい、そして虚無的な(といっては失礼にあたるかも知れませんが、広すぎて、寒すぎる帝国を統治することは甚だ難しく、どの皇帝も途中もしくは最初から政治を投げ出して引きこもる傾向にある)ツァーリー(皇帝)たちの王位継承〜死去までの人生が描かれています。そして、自国民は徹底して「搾取すべきモノ」、反乱は「鎮圧すべきモノ」であり、「無尽蔵にあるモノ」としてしか見ていませんでした。レーニンが出てきたとき、「なんて無茶苦茶な……」と思いましたが、それは長年やられてきたことをやり返しただけなのだということがよくわかります。自国民は労役要員でしかないので識字率は低く、芸術もドイツやフランスへのあこがれが強く、それらの国から宮廷画家を集めてくるだけでしたので、19世紀後半に入るまで独自の文学や美術や音楽は開花しませんでした。
 ニコライ2世は14歳〜50歳の死の4日前まで日記を書き続けていたそうです。およそ51冊にわたるその中には大津事件のことも書かれていて、そこには「刺された怒り」ではなく、その後の日本政府(天皇)の迅速かつ丁寧な謝罪と対応への謝辞と、母がどれだけ心配するだろうという息子としての思いが綴られていたそうです。ニコライ2世は父のアレクサンドル三世をまねて、家族第一の子煩悩な皇帝だったようですが、まったく政治を顧みず、国をとことんダメにしてしまいました。有能な皇帝が300年間輩出されない国……ロマノフ王朝は暗黒の歴史そのものでした。民衆への接し方をみて、「人権」という概念がどれだけ新しい考え方なのかがよくわかりました。
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2017年10月22日

『残り者』 朝井 まかて著 双葉社 16/05

残り.jpg 時は幕末。江戸城の無血開城に尽力した天璋院(篤姫・13代将軍家定の妻)の命により、大奥の女性たちは一刻の猶予も許されず江戸城からの退去を始めていた。すでに静寛院(和宮・14代将軍家茂の妻)は田安邸に向かった。あとは天璋院つきの女中たちが一橋邸に向かうのみだ。ところが、呉服の間のりつは、呉服の間の最後を確かめずにはいられず、玄関に向かう女たちの流れに逆流してひっそりと部屋へ向かった。同じように離れがたく屋敷に残った者が3名。御膳所のお蛸に、御三之間のちかに、静寛院付き呉服の間のもみぢだ。さらに格段に身分の高い御中臈のふきとも遭遇する。なにゆえ彼女たちは残ろうとしたのか、そこにはそれぞれの生い立ちと愛執が関係していた。彼女たちの語りを通して、天璋院、静寛院などなんとか徳川家を守ろうとした女性たちの姿も浮かび上がってくる。「徳川家が守ってきたのは、世の泰平であった。それも旦那様(天璋院)がいう宝なのだ。」というふきの言葉に、大河ドラマの「篤姫」が重なりました。大奥で働く女性たちの、矜持や意地も感じられて、働く女性の先駆けは大奥にあったのねと楽しく読了しました。
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2017年10月15日

『何者』  朝井 リョウ著  新潮文庫 12/06

 何者.jpg直木賞受賞作と聞きつつなかなか手が伸びず、ようやく読みました。けん制しあったり、自意識過剰だったりする就職活動の描写が淡々と続くため、内容になかなか集中できず、「ふ〜ん、最近の就職活動はこういう風になっているのね。」とハウツー本感覚で読んでいたら、後半で瑞月・理香、拓人、隆良、ギンジ、それぞれの心情が吐露され、そのリアルな”痛さ”が直木賞に選ばれた理由なのかなと思いました。
 内定がなかなかもらえない辛さを素直に吐露できない意固地な自分、友達が内定をもらうと喜んでいるフリをしながらその会社のブラックな部分を探して溜飲をさげる自分、肩書を並べ立てることでしか自己表現できない自分、「おれは皆と同じ道は選ばない」とうそぶきながら水面下であがく自分、就職活動している当事者なのに他人を分析・観察して批判ばかりする自分。読んでいて決して楽しい本ではありませんでしたが、自意識過剰なこの世代の「自分は何者なの?何様なの?」という叫びが伝わってくる作品でした。
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2017年10月14日

『ハリネズミの願い』 トーン テヘレン著 新潮社 16/06

 ハリネズミ.jpgトーン テヘレンさんはオランダで有名な作家さんだそうです。職業はお医者さんで、毎日子供たちのために動物が主人公の物語を創作して語っているうちに、どんどんお話が湧き出してきて、それを数冊の本にまとめていったのだとか。とても素敵なエピソードですよね。

 さて、物語はハリネズミが森の動物たちを我が家に招待するための手紙を書くことから始まります。ハリネズミの願いは「誰かと友達になって楽しい時間を共有すること」。
 ところが、心配症で自分にとことん自信がなく、妄想癖のあるハリネズミは、手紙を受け取った相手の反応を気にして、実際に手紙を出すことができません。迷惑かもしれない。僕の家が気に入らないかも知れない。用意したケーキが気に入らないかも知れない。別の動物の家に集まって僕を笑いものにしているにちがいない。もし来てくれたとしても、そいつはイヤな奴かもしれない。
 ハリネズミは妄想の中で、何十匹もの動物が来たパターンとその悲惨な結末を想像し(この一つ一つがナイーブでとことん自虐的でなんとも言えない味わいがある)手も足も出なくなります。そんなに怖くて気を遣うなら招待しなきゃいいのに、もしかしたら気の合う友達と幸せな時間が持てるかも知れないという可能性も捨てきれない……。
 この自意識過剰で心配性で身構える癖のあるハリネズミさん(あ、ハリネズミさんの針は自分の殻を守って、刺される前に相手を刺して防御するということですね。)の本が人気になるということは、この繊細さや孤独感、ささやかな幸せを求めてやまない気持ちを理解し、共感する人が世の中には多いということですよね。なんだかとても「丁寧に謙虚に生きている人のこと」を教えてもらった気がします。


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『悪左府の女』  伊東 潤著 文藝春秋 17/06

 悪左.jpg数か月前に読んだときには、「伊東潤さん、実在の人物を題材にとって、平安ファンタジーを書いたんだ。」という感想しかなかったのですが、『平家物語』を再び授業のために読み直し、「保元の乱と平治の乱も抑えておこう」と見直したときに、悪左府・藤原頼長が、保元の乱を起こした藤原頼長であることに気がつき、俄然、物語に奥行きが感じられるようになりました。
 悪左府(したたかな左大臣)と呼ばれる左大臣・藤原頼長と、腹違いの兄・藤原忠通が、頼長の養女・多子(皇后)と忠通の養女・呈子(中宮)を輿入れさせ、近衛天皇の皇子をのどちらが先に産むかという権力闘争を繰り広げていました。12歳の天皇が、20歳の呈子が住まう邸に通うことが多いことに危機感を抱いた頼長は、近衛天皇が醜女と管弦を好む性質であることに注目し、まだ11歳で未熟な多子に代わりに、下級貴族の娘で醜女として知られているが琵琶の名手である24歳の春澄栄子に天皇のお相手をさせることを思いつきます。頼長と、英子と、多子、近衛天皇のそれぞれの思惑……。権力に翻弄されながらも、その中で主体的に生きようとする姿が描かれています。
 確かに、崇徳天皇(兄)→近衛天皇(弟)→後白河天皇(弟)への政権の流れ、その中で父と父に愛された弟の頼長が崇徳上皇側に付き、兄の忠通が後白河天皇につくという構図で保元の乱が起こります。そんな武力闘争の前の水面下での闘争が描かれていたとは……。これだから歴史は面白いと思わせてくれた一冊です。
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2017年10月01日

『ナースコール!―こちら蓮田市リハビリテーション病院―』 川上 途行著 ポプラ社 17/07

ナースコール.jpg 著者はリハビリテーション医師だそうです。看護師2年目の玲子さんの視点で、リハビリテーション病院を舞台に患者さんの揺れる心や、スタッフとして働く人たちの矜持や人間性を丁寧に描いていて、いいなと思う文章がいくつもありました。リハビリは、日常生活に戻っていくための訓練の場であり、患者さん本人のやる気がとても大切であること。下半身不随など訓練しても動くようにならないもどかしさや苛立ちに直面したとき、「諦める」のでも「断ち切る」のでもなく、「そっとその思いを鞘に収める」という考え方があることを教えてもらいました。PT(理学療法士)やOT(作業療法士)やST(言語聴覚士)それに医師と看護師がチームとして共に成長していく物語なので、急性期病院以外の医療現場を目指す人にもお薦めできる本です。
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『コンビニ人間』  村田 紗耶香著  文藝春秋  16/07

 コンビニ人間.jpg芥川賞受賞作品なので遅ればせながら読んでみる。
(「BOOK」データベースより引用)
「36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、
完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。」
 ↑非常に上手な紹介文だと思いました。本当にこの通りの内容です。
常軌を逸脱した恵子さんの生態なのに、淡々とした文章が「これが私の普通ですが何か?」と言っているようでラストまで片時も目を離せませんでした。Amazonなどで書評を見ると「私の日常と似てる!」「共感できる」というコメントも多く掲載されていたので、世の中にはいろいろな人がいるものだとつくづく思いました。

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『科学がつきとめた「運のいい人」 中野 信子著 サンマーク出版 13/02

科学がつきとめた.jpg 脳科学者である中野先生の本です。『サイコパス』、『努力不要論』と読みましたが、どの本も非常に読みやすいです。この本は「運を味方につけている人は、こんなモノの見方をしていますよ」という視点で書かれていて、それを具体的に紹介しているのでノウハウ本として有益なのではないかと思います。
 運・不運というのは、誰の身にも公平におきるわけではない。1万回コインを投げた表裏の平均値は、ゼロに落ちつくのではなく、表のほうに200〜300、裏の方に200〜300偏りがでるそうです。運もこれと同じで、人生という限られた期間における目の出方はある程度どちらかに偏ってしまいます。しかし、圧倒的にプラスという人も、絶望的にマイナスという人も存在しない。しかし現象から離れ、脳がとらえる「運がいい・悪い」の視点で物事をとらえると、「運のいい人」は、単に運に恵まれているというわけではなく、運をつかみ同時に不運を防ぐような行動・物事のとらえ方・思考パターンを持っているということがわかるそうです。詳細は読んでいただくとして、@自分を大事にしている(常識や世間一般の平均値に流されず自分の価値観を大切にして、自分を丁寧に扱っている)A感謝の気持ち、人を思いやる気持ちを人一倍持っている(独り勝ちしようとせず、他者と共存することを目指す)ことが運を引き寄せるために重要だということがわかりました。
 
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2017年09月18日

『蜂蜜と遠雷』 恩田 陸著 幻冬舎 16/09

mitubati.jpg 「チョコレートコスモス」と同じテイストの作品で、久しぶりに活字をむさぼり読む楽しさを味わいました。ピアノコンクールが舞台なので競い合うピアニストたちのバックグラウンドが徐々に明らかにされていくのも面白いし、ピアニストたちの誰もが魅力的なのでみんなに決勝に残ってほしくてハラハラしながら読み進めました。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たないが、巨匠が認めた実欲の持ち主・風間塵15歳。母の死によりピアノが弾けなくなり、長らくコンクールから遠ざかっていた栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性と整った顔立ちで多くのファンを持つ名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
 音楽を文字で表現した恩田さんの圧倒的な筆力、さすがです。読み終えるのがもったいない本でした。
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『ブリューゲルの家族 幸せをさがす二十五の手紙』 曽野 綾子著 光文社文庫 97/10

 ブリューゲルの.jpg過去に何度も読んだ本ですが、国立国際美術館に「バベルの塔展」を見に行くにあたって、再び手に取りました。
たくさんのブリューゲルの作品に出会えると同時に、ブリューゲルの絵の中に自分たち家族の物語を見出す妻の物語でもあります。このお話に出てくる無理解な夫は、私のよく知ってる誰かさんにそっくりでいつもなぞらえて読んでしまいます。肝心の「バベルの塔」のページでは、四階の宗教行列のことにふれていました。虫眼鏡でみないとわからないくらいの人間がなんと1400人ほど描かれていることは、今回の展示を見に行って初めて知りました。原作本を読み、映画をみてまた本を読むと深く読み取れるのと同じように、展示を見て再び本を読むとバベルの塔の面白さが一層際立って感じられるようになりました。
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『大丈夫!キミならできる!』14歳の世渡り術 松岡 修造著 河出書房新社 12/08

松岡修造.jpg 「熱血!」が代名詞となっている松岡さん。でも本当の松岡さんは恥ずかしがり屋だし、消極的で心もそんなに強くなかったそうです。だからこそ、どうすれば強くなれるのか、どんな自分になりたいのかを真剣に悩んで、失敗や挫折を繰り返して今の自分を作ってきたそうです。性格は変えられないけど心は変えられる。「心=気持ち」です。気持ちを変えれば、行動や発言が変わってくる、そうやって「積極的な自分」を作り出してきました。
 そんな彼からの具体的でわかりやすいメッセージがたくさん紹介されています。日記を書いて自分の心を整理すること、「禁句ルール」を作ってあいまいな返事をしないこと、「できる!ガンバ!」と自分で自分を鼓舞し、消極的な言葉は使わないこと、自分の中に鬼コーチを持つこと。
 彼自身は自分の中に「鬼コーチ」を持つことができず、強制的に自分を追い込むために慶應義塾からテニス部が日本一厳しい福岡県の柳川高校に転校したそうです。そしてそこからさらに高3でテニスを本格的に学ぶべくアメリカに渡ったそうです。そのことを彼はこう記述しています。「アメリカではテニスをするための最高の施設、いいコーチ、いい選手とすべてが用意されていたけれど、自分でこうしたいという意見を言わない限り、何も動かない場所でした。自立して、決断して、自分を主張しなければただそこにいるだけ。辛くて厳しい柳川高校のテニス部は、なんて楽な場所だったんだろうとアメリカに行ってから思うようになりました。」
 「何をするにも”自分の意志”が入っていなければ本物にはなりません。勉強でもスポーツでも、がんばっているフリをしている人はたくさんいます。がんばっているフリをすれば、その場はラクして切り抜けられます。でも、誰のために、何のために、がんばるのかという根本からは遠ざかっていきます。フリをすることは自分にとっていちばんのマイナスだと気づいてください。」とても読みやすく心に響くメッセージでした。
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2017年08月17日

『鉄の骨』 池井戸 潤  講談社文庫 11/11

 tetu.jpg建築業界いわゆるゼネコンの談合をテーマにした小説。入社4年目の富島平太が現場から業務課に配属され、今まで知らなかった”談合”の世界に巻き込まれていく。新人の視点でストーリーが進んでいくので、ゼネコンやら談合の話が素人にもわかりやすく、どんどん話に引き込まれて行きました。談合は悪なのか?そりゃ安いに越したことはないでしょうが、あまりに価格勝負にすると、下請け企業が泣きをみることになる。この話のように画期的な方法でコスト削減の切り札が見つかれば、受注先も下請けもゼネコンも儲かり三方よしに収まるでしょうが、そんなことはなかなかない。「必要悪」と「正義」、「企業間の生き残りを懸けた闘い」と「業界全体の利益」が、矛盾しながら成り立っている中で、登場人物のそれぞれが苦悩しながら自分の歩む道を模索しているところにとても好感が持てました。いろいろなしがらみができると、自分だけ「白」ではいられない。そんな中でも、自分なりの矜持を持って、覚悟して突き進むしかない。それが正しい道だと信じて――。
 久しぶりに読書に没頭することができました。おすすめです♪
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