2012年04月16日

『夏天の虹』 みをつくし料理帖 田 郁著 角川春樹事務所 12/03

katenn.jpg冒頭から試練のはじまりで思わずため息が出ます。『心星ひとつ』は途中までしか読んでいなかったのでこういう展開になっていたとはつゆ知らず。今回は小松原様が全く登場しないので(澪との縁談が破談になったのでそりゃそうでしょうが)恋愛の要素がなくなってちょっぴりさびしい気がしました。
 それにしても、本当に講演会でおっしゃっていた通り、次々と試練がふりかかります。料理の道を選んだために、小松原様と一緒に生きる道が閉ざされたのに、料理番付からは名前さえ消えてしまうし、さらに心労が重なったせいで味覚を失ってしまうなんて。まぁそのおかげで又次さんが「つる屋」に二か月住み込みで料理を手伝ってくれるようになるのですが、その又次さんもラストに悲劇が待ち受けています。「災い転じて福と為す」「塞翁が馬」という言葉通り、人生何が良くて何が悪いかは最後までわからないのでしょうね。それでも澪には料理という一生追及し続けたい仕事があり、自分の料理を愛してやまないお客たちがいて、それだけでも十分幸せなのかもしれません。今回もユーモアと人情あふれる美しい文章にふれ、心なごみました。
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2012年04月15日

『プロポーズはいらない』 中村 うさぎ著 中公文庫 10/05

puropose.jpg
久しぶりに中村うさぎさんの小説を読みました。
29歳の働きマン・緒方千鶴子の女磨きと生き方探しがテーマです。
熱帯魚と回遊魚という女性の分類が面白かったのでご紹介します。もちろん千鶴子は回遊魚。
付き合っていたイケメンの彼を妊娠を理由に受付嬢・岡田ひとみに持っていかれ、なおかつ結婚式に招待されるという憤慨の場面でこの分類が出てきます。「岡田ひとみは美しい体色とひらひらとした尾をもつ熱帯魚。水槽の中で、エサをもらいながら大事に大事に育てられる観賞用のお魚だ。一方のあたしは広い海を泳ぎ続けていないと死んじゃう回遊魚。自分が水槽に閉じ込められたら生きていけないのはしてるんだけど、でも時々、いつも必死で泳いでいる自分に疲れちゃったりして、気がつくと鱗もボロボロに剥げていたりしてさ、そんな時にはきれいな姿で優雅に暮らしている熱帯魚が幸せそうに見えちゃうの。熱帯魚の幸せと、回遊魚の幸せは、全然違うはずなのにね。」そして小説の最後にはこう語らせます。「人生、幸せなときもそうじゃない時もある。でもね、あたしたちは責任を取らなきゃいけないのよ。それが自分の選んだ道だから引き受けなくちゃいけないの。そしてそれを引き受けることに、誇りを持ちたい。自分で自分の生き方を選んだ者だけが、その誇りを持てるのだから。」
 やはりうさぎさんは女性の内面を書くのが上手です。漠然と感じていることをはっきりと文字で表してくれるので、「そうそう、その通り!」と共感できるところがたくさんあります。やはりこれからも彼女の作品を追いかけよっと。
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2012年01月22日

『銀二貫』 田 郁著 幻冬舎文庫 22/08

ginnji.jpg 姉と同僚の両方から、絶賛されていた『銀二貫』がとうとう手元に回ってきました。
午前3時に読了。あまりに素晴らしいお話すぎて、途中で寝ることができませんでした。まだ1月なのに、今年のベスト3に確実に入る本だと思います。
 この感動をどう伝えたらよいのかわかりませんが、タイトルと内容がここまでピッタリな作品はさほど多くないと思います。銀二貫……この大金を、大阪天満の寒天問屋の主人・和助は最初、仇討で父を亡くした鶴之助という子どもを救うために使います。そもそも和助は、この大金を火事で焼失した天満宮に寄付するために貯めていました。天満宮への信仰心が篤い番頭の善次郎はそのことで和助をなじりますが、和助はうまくあしらって鶴之助を丁稚として商人の生き方を教え、育てます。そして何年もかかってようやく再び銀二貫を手にしたとの時、またある事件が起こり、このお金は再び人の窮状を救うために使われます。足かけ22年、寒天問屋で誠実に生きる人々の姿をとらえたこの物語は、人としてどう生きるのかを読み手にさりげなく問うていると思います。生き方に感動できる本です!!(昨日学んだ、道徳のお話とリンクすることが非常に多かったです。なんやかんや言っても、モノ・カネやろという風潮に、一石を投じる力があると思います。)
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『小夜しぐれ』 田 郁著 角川春樹文庫 11/03

 sayo.jpg今回は、つる家の店主・種市が娘を亡くした経緯が語られます。冒頭がちょうど睦月の話ではじまるというそれだけの偶然もなんだか嬉しくなってしまいます。
 吉原廓の花見の宴の料理を作るお話の、色あざやかな菜の花と塩漬けの桜が湯の中でたおやかに開いていく描写には、本であるにも関わらず目で堪能したような心持ちがしましたし、伊瀬屋の美緒が大好きな源斉先生を諦めて番頭さんと結婚する話には、大人としての成長を感じました。戯作者・清右衛門の毒舌も健在ですし、版元・坂本堂が美味しい料理にきゅーと目を細める描写も冴えわたり、ますますこの物語から目が離せません。なんて素敵な作家さんに出会えたのだろうと幸せな気分に浸って読み終えました。それにしても小松原様がみおを思い出す目はなんと優しいことでしょう。郁さん、講演会で「試練が続きます」宣言をされていましたが、どうぞ最後は二人をハッピーエンドにしてくださいね。つづけて『銀二貫』に突入します。
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2012年01月08日

『ハッピーマニア 全11巻』 安野 モヨコ著 祥伝社 01/19完結

happy.png アラフォー女子会で知り合った方に紹介していただき全11巻読み終えました。(読書が好き!という話から、〈女を楽しむ本紹介〉で盛り上がる^^ 私は『花宵道中』『負け犬の遠吠え』『永遠の途中』と、中村うさぎさんを紹介。ほかに田口ランディーさんの『スカートの中の秘密』をご紹介いただきました)
 適齢期の主人公カヨコさんの恋愛状況を赤裸々に描いた作品です。きわどい描写も多いので中高生にはすすめられませんが、カヨコさんをはじめ、親友のフクちゃん、その他の登場人物の心情もあけっぴろげで、とても共感しながら読みました。とくに親友フクちゃんとのやりとりが最高♪過激なカヨコの暴走を止めたり、加速させたり、まるで陰で仕切るマフィアの親分のような女性です。自分のことを足蹴にするカヨコを一途に追い続けるタカハシの存在もとってもステキ。「え!これで終わり!?」という呆気ないラストだったのですが、とってもいい気分転換ができました。
 好きな描写を書き留めておきます。10巻…@タカハシの声が熱で抜けた水分の代わりにすうーっとあたしにしみこんでくるのがわかる なんなのかな このかんじはAのぼって落ちてを繰り返す 何度も何度も 元気になって あんなやつ どーでもよく思えて 次の瞬間心がちぎれるほど哀しくなったり―「もーダメごめんフクちゃん、泣いていい?」 11巻…あたし達はただの恋人だから…冷めてきて普通の目にもどればこーゆうささいなケンカでも別れてしまえばそれっきり… でも結婚したら呪縛できるのだ 心が冷めても離れても A「結婚なんて意味がないじゃない!」「そう…意味なんて無い 浮気をしてもそれでも 一生一緒に生きていくカクゴがなければ 意味ない」「あたし『永遠の愛』なんて…誓えないよ」「うん」「浮気するかもしんない…」「……う…」「自分でもどーなるかわかんないよ。」「それは……本当はこの世の誰もそんなの誓えない。 今……愛していればいいから」←えらい!タカハシ、男だねぇ^^というわけで、最後はお決まりの結婚で締めくくりでした。
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2012年01月07日

『子どもが必ず本好きになる16の方法 実践アニマシオン』 有元 秀文著  合同出版 06/01

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アニマシオンの講習会に参加したときにご紹介いただいたのがこの本。この講習会で絵本をつかったアニマシオンを体験し、本を使った授業展開に意識が向いた。そして年末に参加したある講演会でも本を用いた国語教育の実演にふれ、「時代は読書教育を求めている」と実感した私。興奮して家に帰って資料を整理していると、なんとアニマシオンで利用したこの本と講演会の実演者は同じ有元先生でした。そりゃ、同じ方向を向いていますとも。ともあれ、有元先生のおっしゃるように、教師が正答を持っていて、生徒がその正答を探り当てるような授業には限界があるのも事実。「物語の続きはどうなると思う?」「お駄賃って、どのくらいの金額だと思う?それはなぜ?」「あなただったらどうする?」と言った答えが一つではない問いかけは、勉強ができない子にも考える機会を与えるのでとても有効な方法だと思う。問題は、それをペーパーテストにどう反映させ、評価するかだ。この点がまだ消化できず、腑に落ちないところである。
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『嫁の遺言』 加藤 元著 講談社 11/06

yomenoyu.jpg7篇の短編集。主人公はどれも庶民的でどこにもいそうな男女です。ありふれた日常のなにげない会話や生活から、その人の心に秘めた思いをギュッと凝縮して淡々と文章に表しているところがすばらしい。短編なのに一人一人の人生の陰影が見えるようです。
 とくに好きなのは「あの人への年賀状」。近所の子供とハゲじいさんしかこないような街の散髪屋。改築に際しても、どうしても散髪屋を続けさせてくれという母ちゃんが、お店を続けたかった理由とは……。息子から見た母ちゃんの人生が年賀状によって覆される瞬間がとてもすてきでした。
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『おそろし 三島屋変調百物語事始』 宮部 みゆき 角川書店 08/07

osorosi.jpg続編の『あんじゅう』がとても好きだったので、読むことにしました。とても辛い過去をもつ姪のおちかを慰めようと、三島屋の主人はおちかにお客の不思議な話を聞くという一風変わった仕事を言いつけます。そしておちかは、お客がもちこむ不思議な話を聞くことで、自分の重荷を少しずつ降ろしていき、やがて自らの身の上についても語りはじめます。辛い思いをしているのは自分だけではなかったのだという思いが、おちかに勇気を与えました。過去の事実を変えることはできませんが、その意味や解釈は変えることができます。『あんじゅう』で扱う不思議話は、からっとした明るさがあるのに対し、『おそろし』は湿り気と粘着性を感じさせました。まるで「をかし」と「あはれ」の関係のようです。
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2011年12月23日

『ひとりが、いちばん!』 橋田 壽賀子著 だいわ文庫 08/08

 hitoriga.jpg副題の「頼らず、期待せず、ワガママに」というフレーズが気に入って思わず借りてきました。脚本家の大御所としてお名前は知っているものの、彼女自身のことについては初めて知りました。40歳の時にテレビディレクターとご結婚されたこと、海が見える別荘を本宅としてお住まいであること、ご主人を癌で亡くされたこと。一日に原稿用紙十枚書くことをノルマとされていること、そしてどうしても南極に行きたいと70歳をすぎてから豪華客船「飛鳥」に乗って夢を叶えたこと。いいたいことを言い、やるべきことをやり、自分に正直に生きてこられた方なのだと感じました。またお手本にしたい女性に出会えたわ♪私も働くだけ働いたら豪華客船で旅行に行くぞ〜!(しかし、飛鳥に南極に行くコースがあったとは……。サラリーマンの年収にあたる金額。しっかり働いてお金を残さなくっちゃ>< )
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『ソルハ』 帚木 蓬生著 あかね書房 10/04

soruha.jpg 1996年9月27日、アフガン政権が崩壊し、タリバンが首都カブールを制圧。生まれたときから戦争が日常の風景だった少女ビビは、初めてタリバンの厳しい監視下に置かれた生活を送ることになります。女子は教育を受けられなくなり、ブルカの着用を義務付けられ、男性の親族としか外出できなくなり、不貞を働いたり公共の場で笑うとムチ打ちの刑、不貞を働くと石投げによる死罪。
 そんな中でも母の「一万時間の法則」(一週間に二十一時間同じことに打ち込むのを十年続けれは、必ずその道では一流になれる。)の教えを守り、一日三時間の英語の勉強に打ち込むビビ。
 巻末にアフガニスタンの歴史やイスラムの教えについても丁寧な解説がついています。帚木さんの歴史を風化させてはいけないという信念がストレートに伝わってくる作品です。
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『明日この手を放しても』 桂 望美著  新潮文庫 07/05

asukono.jpg 桂さんにしては淡々としたおとなしい作品。19歳で事故で視力を失った完璧主義で潔癖症の凜子と、怒りをエネルギーに変える兄・真司の二人の共同生活の12年間が描かれています。
 視力を失った上に母まで失った無気力感を「きっちりんこ」という完璧主義の性格が救うことになったり、怒ってばっかりでみっともないと思っていた兄が自分の代わりに怒ってくれていることに気が付いたり、12年の間に徐々に呼吸がぴったりあう二人。けれど凜子はラストで独り暮らしをすることを決めます。
 好きなセリフがあったので書きとめておきます。二人で作るマンガの主人公のラストシーンをめぐる会話です。「ありさも大人になったんだよ。毎回毎回傷ついて、泣いてじゃマンネリだし。痛い、哀しいって泣くのもそろそろ卒業しないと。辛さは減らなくても―苦しさを心の中にたたんで仕舞えるようになったんだよ。」
 大人になるとは、苦しさも哀しさも心の中にひっそりとたたんで仕舞えるようになることなんだ!と納得。
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2011年12月04日

『本日大安なり』 辻村深月著  角川書店 11/02 

heiann.jpg 憧れの高級結婚式場で、同日に行われる4つの結婚式。新郎を試そうと式当日の入れ替わりを企む美人双子姉妹。かつて自分から全てを奪っていった女の式を担当するウェディングプランナー。大好きな叔母の毒殺計画を聞いてしまった小学生。妻がいることを言い出せないまま浮気相手との結婚式当日を迎えてしまい、式を中止させようとする男。大安吉日、4組のカップルの式のそれぞれの結末は……。
 双子の複雑な心境が巧みに描かれている。「わたしじゃなきゃだめ」という人を選びたいという身体を張った真剣勝負。実際に知っている双子ちゃんに「この感覚、共感できる?」と聞いてみたくなりました。今回も期待を裏切らない辻村作品でした。
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『蜜姫村』 乾 ルカ著  角川春樹事務所  10/10

mituhime.jpg 恐ろしくて、せつなくて、幻想的で、この世界にぐいぐい引き込まれて一気読みしてしまいました。久しぶりにイマジネーションを掻き立てられる本に出会いました。
 昆虫学者の山村は、偶然目にした不思議な蟻にひかれて、とある過疎の村に一年間定住してフィールドワークを行うことを決めた。その蟻とは、腹部が異常に膨れ上がったアリだった。妻を伴ってやってきた山村に、村の長老はやさしく接する。だが、山道を上ったところにあるというお社には絶対に近づかぬようにと警告する。あの場所は村人しか受け入れない場所なのだと。一方、妻は医師として過疎の村で医療活動を行おうとするが、村人たちは「医者はいらぬ」とかたくなに拒否する。そして現にどんな病気をしても、お社に行けば治ってしまうことがわかってくる。お社には何があるのか、そしてこの村はどんな秘密を抱えているのか……。というホラーとSFが入り混じった作品です。
 読み終わったその日に偶然手にした『とってもへんないきもの』という本に紹介されているミツツボアリ。このアリは、オーストラリア・中央アメリカに生息し、腹部を蜜の貯蔵庫にする習性があるそうですが、そうか、作者はこのアリにヒントを得て、こんな恐ろしくも美しい物語を思いついたのかと、さらに感心しました。貴志祐介の『新世界より』も不思議な習性を持ったハダカデバネズミをテーマに異次元の世界を躍動感たっぷりに描いていましたし、未知の生き物が作家の目に留まった時、こんな風にアレンジを加えられ、息を吹き込まれるのかとしみじみ感動しました。
 ちなみに「蜜を貯蔵庫」にすることを「壺」というそうです。そこからタイトルの『蜜姫村』に戻ると、本当によく出来た作品だなぁと改めて思います。匂いや衣擦れの音、恋のせつなさまでもが伝わってきそうな作品です。
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2011年11月27日

『最終講義 生き延びるための六講』 内田 樹著 技術評論社 11/07 

saisyuu.jpg まったく内田さんたら、どれだけ本に付箋を貼らせるのでしょう!今回も「なるほど、そうだったのね。そういうことか。」と納得することが多く、大いに参考になりました。
 とくに面白かったのが、北方四島返還論についての見解。「北方四島」について国民が無知なのは、メディアが報道しないため。メディアが報道しないのは、アメリカの顔色を窺っているから。なぜアメリカが関係するのかというと「北方四島返還」を後押ししたなら、ロシアから「じゃあお前は南方(沖縄)を返せや!」とすごまれるに決まっているから。ということでした。歴史的な経緯から見れば、北方四島は日本の領土でありEUもそれを認めている。だけど、国際調停に持ち込んでEUの支持を得て決着…という流れにのせるのは非常にまずい。なぜまずいかと言えば、この問題の周旋役はアメリカでなければならないから。「西太平洋はおれの裏庭」と思っているアメリカの顔を立てなければならない。というジレンマの中で、この問題は棚上げされているという見事な指摘に目からうろこが落ちました。
 それから「教育に等価交換はいらない」という持論も、なお一層磨きがかかっています。あと日本は医療、接客サービス、教育立国をめざせ!という話も納得の内容でした。
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『魔女の1ダース』  米原 万里 著 新潮文庫 00/01

majyo.jpg副題に「正義と常識に冷や水を浴びせる13章」とあるように、常識がくつがえる話題がユーモアたっぷりにジョークを交えながら書かれています。タイトルは、私たちの常識では1ダースが12だが、魔女の世界では13であることを指しているそうだ。あ、これだけで常識がくつがえったわ(笑)。
 さて、内容は米原さんならではの異文化論が展開される。その中でも印象に残ったのは、母語以外の言語を学ぼうとするとき、母語とまったくかけ離れた言語の方がより完璧にその語をマスターする可能性が高いという指摘だ。初級を徹底的に身につけること。それが言語を習得する一番よい方法らしい。が、なまじ言語が近いと脳はなるべくさぼろうとする機能が自動的に備わっているから新たに習得する労を惜しんで、出来合いの類似パターンで間に合わせてしまうらしい。そうか、似た言語は学びやすい代わりに、専門家レベルに到達するのは逆に難しいのね、納得。
 それから旧ユーゴスラビアの内紛の時、セルビヤ語とクロアチア語は、大阪弁と京都弁ほどの違わず、日本人どころか関西人同士ぐらいのくくりにあるものが、どんどん人工的に「遠くする」政策が政府によってとられ、実際に理解不能な言語になってしまったという話が紹介されている。同時にこの民族戦争により、この土地出身の友人は自分がムスリム人だということを、いやおうなく自覚させられたという。この言葉が最近見た「9.11から10年」というTVの特集番組と重なった。この番組の中でアメリカに住んでいるイスラム教徒の若者たちは、「ふだん自分はアメリカ人だと思っていたし宗教のことも深く考えたことがなかったが、この事件がきっかけでイスラム教を学び始めお祈りも欠かさなくなった。」と語っていた。事件発生後、アラブ人というだけで犯罪者のような扱いを受け嫌な思いをしたにも関わらず、だからこそ自分のルーツに向き合わざるを得なくなり回帰していく……。文化とはすごいものだと改めて考えさせられた。
 最後に異文化を感じさせるイラクの話を。「イラク人の客が友達の家の昼食会で、ホストの高価な皿を割ってしまったとする。するとこの客は決して謝らないどころか、気にすることはないと平然をいってのけるんです。」これは発想法の違いなのだそうだ。「割れてしまった皿は元に戻らない。その皿をあなたが割ったということならば、どれだけ後悔することだろう。ところが神はその皿を割ってしまうという不幸をわたしの身に振り掛けた。だから気にすることはない、あなたは幸福者だ。」という論理展開になるそうです。う〜ん、注釈がなければケンカになりそう。
posted by のん吉 at 17:44| Comment(0) |  ●視野が広がる一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする