2018年01月08日

『イノサン』『イノサン Rouge』 坂本 眞一:漫画家 集英社

inosann.jpg 「SWITCH インタビュー達人たち」という対談番組で、歌手の中島美嘉さんが坂本眞一さんを指名して、この作品を熱く語っていて興味を持ちました。フランス革命時に国王ルイ十六世の首を刎ねた 死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンを中心に、代々死刑執行人としての業を背負って生きるサンソン一族の物語となっています。死刑執行人が題材ですので、当然残忍な死刑がイラストとして描かれていますので怖いしえぐいです。4代目を引き継ぐアンリも幼い時から「死刑執行人の息子」であるがゆえに、学校ではさげすまれ、道を歩けば罵詈雑言を浴びせられ、家に帰れば帰ったで解剖や父の仕事の手伝いが待ち受けています。アンリは何度も自分の血を呪いながら、長男であるがゆえに逃げ切れない宿命を受け入れ、死刑執行人一族の頭首に成長していきます(この痛々しいアンリの成長が見どころの一つです)。一方、妹のマリーは幼いときから血や残虐な行為に対する抵抗感が全くなく「マリーはマリー、やりたいことをやりたいようにやるだけ」と常に冷静に冷淡な姿勢を貫き、自ら志願して女性初の死刑執行人になります(この兄妹の対比も見どころの一つ)。そしてルイ16世のもとにマリー・アントワネットが輿入れしてきます。一部オペラ調になったりもするのですが、きらびやかな宮殿で過ごす貴族たちとパリの下町で暮らす貧民たちの生活環境の違いが非常に緻密で繊細なイラストに鮮明に描かれていてそれが最大の見どころです。ペストや梅毒にかかった人の恐ろしい姿、美しいルイ16世(ルイ16世を美しく描いた人は他にいないと思います)など怖いにも関わらずずるずると坂本さんの世界観に惹きこまれていきます。まさに「大人が楽しむ耽美の世界史」という感じです。ちなみにイノサンは”純真”という意味、イノサンは9巻、Rougeは現在7巻まで発売されています。
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2018年01月07日

『夜行観覧車』 湊 かなえ著 双葉文庫 13/01

夜行観覧車.jpg すっかり内容を忘れてしまったので、久しぶりに読み返す。
高級住宅地「ひばりが丘」に住む高橋さん家族は、旦那さんがお医者さん、奥さんは美人、長男は医大生、長女は有名お嬢様学校に通う女子高生、次男は進学校として名高い男子中に通うバスケ少年。そんな非の打ちどころのないはずのお宅で殺人事件が起きる。父親が救急車で運ばれたのちに死亡したのだ。母親が自分が殺したと自首するが、そもそもの原因がわからない。しかも事件の直前には、近所の人が次男と母親が言い争う声を聞いており、肝心の次男は行方不明で捕まらない。
 その高橋家の隣には、受験に失敗してから家庭内暴力を繰り返す娘を持つ夫婦がいて、こちらの家庭こそ崩壊寸前。どろどろの心中がそれぞれの口から語られるうちに、少しずつ真相がみえてきます。どんなに幸せそうに見えていても、心の中まで幸せとは限らない。また最悪に見えていても、なんとかつながりあっていることもある。断片的に明かされていく真相は、家族であるはずの長男・長女がまったく気づかなかった母の息子コンプレックスが原因だった。家族は父を悪者にして母を守ることで団結します。
 坂の上の高級住宅地も坂の下の庶民の住宅地をも、分け隔てなく見下ろす観覧車が間もなく空地に建設される予定です。
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『君の膵臓をたべたい』 住野 よる著  双葉文庫 17/04

 きみの膵臓.jpg映画化もされ、話題になったこの作品をようやく読みました。
ぎょっとするタイトルの意味はカニバリズムではなく、「昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べた」という話から来ています。主人公の女子高生・山内桜良は、膵臓癌を患っています。そのことを家族以外には隠して生活しているのですが、たまたま病院に来ていた僕が待合室で彼女の「共病文庫」という日記を偶然拾ったことから彼女の病気を知ってしまいます。秘密は守ると約束したにも関わらず、それ以降、僕は彼女からたびたび声をかけられ、彼女のペースにどんどん巻き込まれていきます。他のクラスメイトからは「根暗そうなクラスメイトくん」「目立たないクラスメイトくん」と呼ばれる僕はそれにあらがうことができず、草舟のようにただよううちに彼女に人として惹かれはじめ……という内容です。
 僕の名前は「秘密を知ってるクラスメイトくん」→「仲のいいクラスメイトくん」→「仲良しくん」に昇格していきます。このような書き方をしているのは、二人の距離間を顕示する意味合いと、読者を僕に同化させるための工夫なのでしょうか。二人の会話がとてもテンポよく微笑ましく、楽しく読み進めることができました。桜良は死んでしまうのですが、ベタなラブストーリーではなく、一瞬だけ「君の膵臓が食べたい」と心が通い合ったところに好感を持ちました。不器用な僕が、彼女に出会ったことには意味があった!
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『困難な結婚』  内田 樹著 アルテスパブリッシング 16/08

 困難な結婚.jpg内田さんが、読者からの問いに答えるQ&Aの形で書かれています。
 繰り返し述べられているのは、結婚は「病めるとき、貧しきとき」にこそ効力を発揮する、相互扶助のセーフティーネットの意味合いがあるということ。どちらかが病気や失業した時にでも、片方が働いていたらなんとかなるし、悩みも一人で抱えるより二人なら心強いですもんね。
 そして「パートナーとは、そもそもわかりあえないもの」と思っておくのがよい。わかりたい・わかろうとするのは、「わかってほしい」の裏返しであり、相手に期待するからそうならなかった時に不満を感じたり裏切られたと思ってしまう。最初から一生わかりあえないものだと思っていてくださいとのことでした。
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『漫画 君たちはどう生きるか』 吉野 源三郎:原作 羽賀 翔一:漫画 マガジンハウス 17/08

きみたちは.jpg岩波文庫でおなじみの吉野源三郎さんの作品が、漫画になりました。コペル君はおじさんとのやりとりを通して、「ひとりの人間として、どうあるべきなのか」を考え続けます。誰もが経験するような日常の中で生まれる葛藤と向き合いながら、大人の階段を登っていくコペル君。おじさんはコペル君の疑問や悩みに寄り添いながら、コペル君をより良い生き方、考え方ができるように導いてくれます。おじさんからの返事のお手紙は漫画ではなく活字だけで書かれているので読みごたえも充分あります。原作は名著とされながらも、古い活字体で行間も狭く、非常に読みにくかったので、今回漫画と小説版の両方が同時に発売されたことをとてもうれしく思いました。原作のイメージがそのまま残っているので、とてもよかったです。また、よく売れている(私が買ったのもすでに17刷でした)というのも、「名著は時代を超える」ことが立証されたような気がして嬉しくて、山積みにされた本を見かけるたびにエールを送っています。
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2018年01月02日

『人間力を高める読書法』 武田 鉄也著  16/12 プレジデント社

武田.jpg 母の推奨本です。ラジオ文化放送の「武田鉄矢今朝の三枚おろし」という番組で紹介された内容を書籍化したのがこの本だそうです。母のお気に入りは『狼の群れと暮らした男』の話ということで、オオカミにどうしようもなく魅せられ、オオカミの群れと一緒に暮らしたイギリス人男性のドキュメントです。彼が生肉以外の食べ物を一切絶ち、自分の匂いを消し、集団の中で自分の役割を得て、野生のオオカミたちと共に暮らすにまで至ったいきさつも、そしてその後オオカミの習性を知り尽くした彼がオオカミや犬を知る研究に大いに貢献した話も本当に興味深く読みふけてしまいます。そして武田鉄也さんの語りがこれまた非常に面白い。
 そのほか取り上げている本も、哲学書、ビジネス本、歴史書、言語学、政治論、食べ物の話など間口が広くなおかつ難しい内容を武田鉄矢さんがご自身の解釈でかみ砕いてわかりやすく紹介してくれています。これ一冊で視野が広がった気がしますし、上記のオオカミ本と『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』金谷武洋:著、『福井モデル 未来は地方から始まる』藤吉政春:著、は必ず読もうと思いました。
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2017年12月03日

『プラチナデータ』 東野 圭吾著 幻冬舎文庫 12/07

 プラチナ.png警視庁特殊解析研究所では、DNAからその持ち主の年齢や背格好、肌の色、手足のサイズに容貌までを分析できるシステムを構築した。国民の遺伝子情報のデータバンクがあれば、そこから犯罪者を特定できる画期的なシステムだ。まだ公にはされておらず内々に医療機関と手を組みひそかにDNAのサンプルを集めているところだが、実際に犯罪者の迅速な検挙に効果を上げている。ところが、NF13という連続女性殺害者のデータにはシステムが全く反応しない。DANが見つからないのではなく、システムに欠陥があるのでは?と神楽が疑い始めたとき、システムの開発者である天才数学者・蓼科早樹が殺害される。彼女が何か別のプログラムを作っていたことを知った神楽は、それこそが欠陥を埋めるプラチナデータだと気が付く。しかし、蓼科早紀の衣服についていたDNAは神楽が犯人だと示しており、二重人格の神楽はもう一人の人格が早紀を殺害したのかと不安になり逃走しながらプラチナデータを探すと、思いがけない展開が待っていた……と文字に書くと非常に複雑な紹介となってしまいますが、そこは東野さん、ぐいぐい読ませます。
 実際に警察は2014年末までに被疑者や事件のあった周辺の住民から任意のDNAの提供を求め、59万人のDNAデータを持っているそうです。それがどう使われているのかは闇の中。国家機関による監視社会を告発する一面を持ったこのミステリー小説は非常に東野さんらしい作品だと思います。白いワンピースの少女とキャンパスの中で幸せに…などちょっと乙女チックな感傷を入れるところも含めて、ね。
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2017年11月25日

『あなたのゼイ肉、落とします』  垣谷 美雨著  双葉社 16/10

 贅肉.jpg『あなたの人生、片付けます』の姉妹版で、今度は大庭十萬里さんの妹さんの小萬里さんが活躍するお話です。ダイエットが必要な4人のお客様が、ダイエット本で大ブレイクしている小萬里さんに依頼を出し、様々な悩みを解決してもらいます。小萬里さんは、月1回合計3回の課題を彼らに与えます。それは、ダイエットする具体的な方法ではなく、彼らが無意識で身に付けてしまった”心のぜい肉”をそぎ落とす課題であり、彼らはその問題と向き合う中で、自分の生き方を振り返ります。
 たとえば一人目の園田乃梨子さん49歳は、「ブスとして生きる訓練をしろ」と指南されます。最初は怒り狂う乃梨子さんでしたが、「こうであらねば」といつのまにかがんじがらめに自分を縛っていた鎖を一つずつ緩めていくことで、やりたいことをやる余裕が生まれ、人にも自分にも優しくなれる自分を発見します。ダイエットという興味あるテーマを扱っていますし、軽妙なやり取りも楽しいのでぜひ手にとってみてください。
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『三日間の幸福』  三秋 縋著 メディアワークス文庫 13/12

三日間.jpg 2016年の大阪府の高校生ビブリオバトルで紹介されていて、興味をもちました。
 友達とうまく人間関係を結べず、勉強だけはできる僕は、同じように孤高で周りの人間を見下しながら生きているヒメノとだけどこか通じ合うものがあると感じていました。「大人になったら必ず成功して、あいつらが歯ぎしりして嫉妬で狂うくらいお金持ちになってやる」と思っていたのに、鳴かず飛ばずのまま20歳になった僕は、貧乏と絶望のどん底にあり、売れるものは古本とDVDしかないところまで落ちていました。そんな僕に古本屋の親父は寿命を買い取ってくれるお店があるとの話を持ちかけてきます。サラリーマンの生涯賃金は2億〜3億、ならば悪い話ではないかもと感じた僕はその店を訪ねます。出てきた若い女性の店員は「寿命・健康・時間の売買ができる。」と淡々と告げます。半信半疑のまま査定を受けてみると、僕の寿命は最低価格の30万円だと言われます。しかも年30万かと思いきや、30年で30万、つまり1年1万円の価値しかないとのこと。
 生きていてもそんな価値しかない人生であることに絶望した僕は、3か月間だけ残して寿命を売り、30万円を手にします。そこから、僕と監視員のミヤギ(女性の店員)との奇妙な共同生活が始まり、彼女とのやり取りを通して、徐々に徐々に僕の屈折した心が変化していきます。余命2カ月を切ってから初めて人と心の底から交流し、他人を愛し、生きる目的を見つけた彼が、監視員の監視がなくなる最後の三日間をどう生きたのかというのが、この本のテーマとなっています。
 「それに気づいたのはずっと後のことだった」「その時の僕は、信じて疑わなかった」など、思わせぶりな言葉の書き方が多いので、次の展開が気になってどんどん読み進めることができます。ヒメノという人物との再会の結末が腑に落ちないのですが、それ以外は、「若い子はこういうラノベを読んでいるのね」と大いに楽しみながら読了しました!
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2017年11月14日

『眩 くらら』 朝井 まかて著 新潮社 16/03

 くらら.png葛飾北斎の娘・お栄の一生を描いています。偉大な父の背中を追いかけるかのように、お栄自身もまた絵の世界にのめりこみ、親父どのの作品作りを手伝いながら腕を磨いていきます。この時代に独身で(離婚した)一生を筆一本を頼って生きていくのは並大抵のことではなかったと思います。それでもぶれることなく、親父どのを尊敬し、精進し続けた人生の集大成が「吉原格子先之図」ではないでしょうか。この本の表紙にもなっていますが、この作品は人の目をくぎ付けにする魅力があります。録画したテレビで何度も見るに飽き足らず、結局阿倍野ハルカス美術館の「北斎展」にも足を運び、絵ハガキを買ってきて(お目当てはクリアファイルだったのですが、クリアファイルは発色がよくなかった)、今も眺めながら書いています。「光と陰」「日本のレンブラント」と称されていますが、闇があるからこそ、光が映えるという言葉が実感できる作品です。そして、70歳を過ぎて「まだ満足に絵が描けやしねぇ、73を超えてようやく禽獣虫魚の骨格、草木の出生がわかった気がする。100まで生きたい、もっともっと修行して自由に自在に絵が描けるようになりたい」と本気で願っていた北斎の姿勢に大きな感銘を受けたのでした。
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2017年11月03日

『城をひとつ』 伊東 潤著 新潮社 17/03

 シロ.jpg北条氏に仕え、武力ではなく知略で敵陣を切り崩す大藤一族の活躍を描いた短編連作集です。
幻の兵法書『孟徳新書』の説く秘伝「入込」の術を身に着け、敵将の思考に入り込み、不安や猜疑心、逸る気持ちや功名心を巧みに操ることで、内部から切り崩していきます。自ら敵陣に入り込み、信頼を勝ち取り翻弄していくので命がけの危険な仕事の場合も多く、大藤氏の視点でハラハラしながら読むときもあれば、信頼を裏切られる敵将の立場で「目をかけてあげたのに」と恨めしく思うこともあり5篇とも大いに楽しみました。戦国時代の武将たちはみな背負うものが大きく、その決断には苦悩と犠牲が伴います。慈愛に満ち、潔く、勇ましく、スマートな男たち。本当にカッコいいの一言です。大藤一族の五代(といっても、この時代は本当に世代交代が速いので70年ぐらい)を扱っているので有名な戦国武将とのからみがたくさんあってそれも魅力の一つです。戦国小説として、大いに楽しみました。
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2017年10月29日

『残酷な王と悲しみの王妃2』 中野 京子著 集英社 15/10

残酷.jpg 2巻目をようやく読みました。ちょうど『ロマノフ王朝12の物語』と同時進行で読んだので、こんがらがってしまった部分もありますが、補強して読めた部分もありました。ルートヴィッヒ二世(ドイツ)は同性愛者でありそのことを苦悩し続けていたこと、そしてヴァーグナーの才能とオペラを愛し20年以上も惜しみなく援助し続けながらも、互いにいい関係を築けなかったことが胸にささります。デンマーク皇女マリア・フョードロヴナ(ロシア)は、ロシアのニコライ・アレックサンドロヴィチ皇太子と婚約していたのに、皇太子が挙式間近になって急死してしまい弟のアレクサンドル三世に嫁ぐことになります。そしてニコライ二世を含む6人の子供を産み、ロマノフ家が一家虐殺という悲しい結末を迎える中、唯一生き延びて祖国に帰ります。カルロス四世(スペイン)は、「無能」と父である三世に早々と烙印を押された皇帝です。妻マリア・ルイサとの関係は、ちょうどルイ16世とマリーアントワネットとの関係に似ていて、内気で趣味が手仕事と狩猟の夫と金遣いが荒く社交的な妻という組み合わせで妻に頭が上がりませんでした。マリア・ルイサは10人以上子どもを産み(2〜3人は愛人の子)、夫ではなく舅の仕事を23年間補佐し続けます(三世の后は早々と亡くなっていた)。凡庸で頼りにならないカルロス四世ですが、ゴヤが『カルロス四世家族像』(この本の表紙)を描いたことで永遠に名を名画界に残します。もちろん中央にいるのは、四世ではなく妻のマリア・ルイサです。あとカロリーネ・マティルデ(デンマーク)のお話も載っていますので興味のある人はぜひ読んでください。
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『ロマノフ家 『名画で読み解くロマノフ家12の物語』 中野 京子著 光文社新書 14/07

 ロマノフ.jpgロマノフ家の家系図と肖像画をみながら、ロシア300年の歴史をたどります。ロシアと言えば、イワン雷帝とエカテリーナ二世と、ピョートル大帝、ラストエンペラーのニコライ二世ぐらいしか知らなかったのですが、なんとリューリク朝から始まり、ロマノフ朝の1〜19代目までの血なまぐさい、そして虚無的な(といっては失礼にあたるかも知れませんが、広すぎて、寒すぎる帝国を統治することは甚だ難しく、どの皇帝も途中もしくは最初から政治を投げ出して引きこもる傾向にある)ツァーリー(皇帝)たちの王位継承〜死去までの人生が描かれています。そして、自国民は徹底して「搾取すべきモノ」、反乱は「鎮圧すべきモノ」であり、「無尽蔵にあるモノ」としてしか見ていませんでした。レーニンが出てきたとき、「なんて無茶苦茶な……」と思いましたが、それは長年やられてきたことをやり返しただけなのだということがよくわかります。自国民は労役要員でしかないので識字率は低く、芸術もドイツやフランスへのあこがれが強く、それらの国から宮廷画家を集めてくるだけでしたので、19世紀後半に入るまで独自の文学や美術や音楽は開花しませんでした。
 ニコライ2世は14歳〜50歳の死の4日前まで日記を書き続けていたそうです。およそ51冊にわたるその中には大津事件のことも書かれていて、そこには「刺された怒り」ではなく、その後の日本政府(天皇)の迅速かつ丁寧な謝罪と対応への謝辞と、母がどれだけ心配するだろうという息子としての思いが綴られていたそうです。ニコライ2世は父のアレクサンドル三世をまねて、家族第一の子煩悩な皇帝だったようですが、まったく政治を顧みず、国をとことんダメにしてしまいました。有能な皇帝が300年間輩出されない国……ロマノフ王朝は暗黒の歴史そのものでした。民衆への接し方をみて、「人権」という概念がどれだけ新しい考え方なのかがよくわかりました。
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2017年10月22日

『残り者』 朝井 まかて著 双葉社 16/05

残り.jpg 時は幕末。江戸城の無血開城に尽力した天璋院(篤姫・13代将軍家定の妻)の命により、大奥の女性たちは一刻の猶予も許されず江戸城からの退去を始めていた。すでに静寛院(和宮・14代将軍家茂の妻)は田安邸に向かった。あとは天璋院つきの女中たちが一橋邸に向かうのみだ。ところが、呉服の間のりつは、呉服の間の最後を確かめずにはいられず、玄関に向かう女たちの流れに逆流してひっそりと部屋へ向かった。同じように離れがたく屋敷に残った者が3名。御膳所のお蛸に、御三之間のちかに、静寛院付き呉服の間のもみぢだ。さらに格段に身分の高い御中臈のふきとも遭遇する。なにゆえ彼女たちは残ろうとしたのか、そこにはそれぞれの生い立ちと愛執が関係していた。彼女たちの語りを通して、天璋院、静寛院などなんとか徳川家を守ろうとした女性たちの姿も浮かび上がってくる。「徳川家が守ってきたのは、世の泰平であった。それも旦那様(天璋院)がいう宝なのだ。」というふきの言葉に、大河ドラマの「篤姫」が重なりました。大奥で働く女性たちの、矜持や意地も感じられて、働く女性の先駆けは大奥にあったのねと楽しく読了しました。
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2017年10月15日

『何者』  朝井 リョウ著  新潮文庫 12/06

 何者.jpg直木賞受賞作と聞きつつなかなか手が伸びず、ようやく読みました。けん制しあったり、自意識過剰だったりする就職活動の描写が淡々と続くため、内容になかなか集中できず、「ふ〜ん、最近の就職活動はこういう風になっているのね。」とハウツー本感覚で読んでいたら、後半で瑞月・理香、拓人、隆良、ギンジ、それぞれの心情が吐露され、そのリアルな”痛さ”が直木賞に選ばれた理由なのかなと思いました。
 内定がなかなかもらえない辛さを素直に吐露できない意固地な自分、友達が内定をもらうと喜んでいるフリをしながらその会社のブラックな部分を探して溜飲をさげる自分、肩書を並べ立てることでしか自己表現できない自分、「おれは皆と同じ道は選ばない」とうそぶきながら水面下であがく自分、就職活動している当事者なのに他人を分析・観察して批判ばかりする自分。読んでいて決して楽しい本ではありませんでしたが、自意識過剰なこの世代の「自分は何者なの?何様なの?」という叫びが伝わってくる作品でした。
posted by のん吉 at 21:03| Comment(0) |  ●手軽に読める一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする